第25章 茶会
織田軍と上杉武田軍の休戦協定は公にはされていないため、長政が戦を仕掛ける先が越後である可能性も捨てきれない。
『直美様はどうしてこちらに?』
『私は小谷城でのお茶会に招待されたんです』
『茶会ですか?戦の準備をしている城で茶会など通常は考えられませんね』
『長政様は織田軍と同盟を組んでいながら、戦支度の事を信長様に知らせていないんです。だから長政様が何を考えているのかわからなくて…それを探るためにも茶会へ参加しろって言われて来たんです』
『そうですか。表向きは同盟を組んでいるとはいえ、裏切りは珍しい事ではありません。くれぐれもお気をつけください。貴女は謙信様の大事な方なのですからね』
景家の視線の先に家康と政宗がいるが、こちらの会話は聞こえていない様だった。
『では私はこれで。また春日山城でお会いしましょう』
そう言うと景家は城下町の外れに向かって歩きだした。
(久しぶりの再会だったけど相変わらずって感じだったな。まだ諦めてないとは思ってなかったよ…ふぅ)
『ねぇ、今の誰?』
後ろから見ていた家康が尋ねる。
『今のは謙信様の家臣の景家さんだよ』
『は?なんで謙信の家臣がここにいるの?』
『一人でここまで偵察に来たみたい。戦支度の事を調べてたみたいだけど』
『戦の相手は軍神なの?良くわからない事だらけで気味が悪いから茶会が終わったらすぐ帰るよ』
話をしているうちにちょうどいい時間になり、3人でこのまま小谷城に向かう事になった。