第24章 鷹狩り
『じゃ、戻るよ』
『あれ?摘んでいかないの?』
家康があまりにもあっさりとその場を離れようとするので思わず声を上げてしまった。
『この村の資産だからね。この薬草たちは村興しの材料になるでしょ。ここに住む人たちの生活が苦しくならない様に提言するのも俺たちの仕事だから』
『そっか、視察ってただ見るだけじゃないんだね』
感心しながら秀吉の所に戻ると、そこにいたのは秀吉ではなく長政だった。
『秀吉殿なら信長様と一緒に村の中を見て回ってるぞ』
『それなら俺も行ってきます。長政さん、直美をお願いしてもいいですか。一人でうろちょろして迷子になられても困るんで』
『もう!子供じゃないのに!』
『ああ、任せろ。俺たちはここで待ってるからゆっくり行ってきたらいい』
『時間はかかりません。なるべくすぐ戻ります』
長政が返事をすると家康はすぐに信長と秀吉のいる方向へと走って行く。
その場に残された直美と長政。
沈黙が気まずくて何でもいいから話そうと思っていると、長政から話しかけてきてくれた。
『直美、秀吉殿から聞いたよ。色々な事を学ぶのが好きなんだってな』
『はい。さっきも家康から薬草について教えてもらいました』
(学ぶのが好きというか、この時代で生き延びるために知識をありったけ詰め込んでるだけなんだけどね)
『普通の姫とは違って面白いな。昨日も忘れ物を自分で取りに戻った。普通は誰かに頼むだろ』
『全然面白くなんかないですよ。私の普通が皆さんの普通と違うだけです』
『やはり面白い姫だ。今度、俺が暮らしている小谷城(おだにじょう)で茶会を開く。来てくれないか?』
(えー……光秀さんとの話を思い出すとあまり関わりたくないなぁ)
『では信長様のお許しが出たら是非ご挨拶を兼ねて伺いたいと思います』
そう簡単に許しが出るとは思わない。
とりあえず無難な返事を返した。