第21章 富山城、再び
部屋には信長と直美の2人が残される。
『信長様、心配かけてごめんなさい』
『謝ることなど何もない』
(んー、でも何か言いたい)
『助けてくれてありがとうございます』
『何を言っている。助けられたのは俺の方だろう』
『ふふっ!そうでした。でもこうして越中にも小田原にも来てくれました。ありがとうございます』
会話がかみ合っているのかいないのかわからない。
久しぶりに交わす会話を2人で楽しんだ。
『貴様は幸運も強いが悪運も同じくらい強い様だな。顕如に北条に毛利まで引き寄せるとは大したものだ。おかげで退屈しなかった』
『悪運が強いのは嬉しくないですけどね』
信長の表情を見るとそれは今までで一番優しく微笑んでいる様に見える。
あまりにも大きな安心感に、抑えていた様々な感情が涙となって一気に溢れ出した。
『ううっ……信長様……私…ごめんなさい…小田原で…無理矢理…』
『その先は言うな。謝るのはこちらの方だ。助けるのが遅くなってすまなかった』
信長は横になっている直美の頬に手を添えると、親指で涙を拭っていく。
それがさらに直美に安心感を与え、ますます涙が止まらなくなってしまった。