第21章 富山城、再び
『直美、笑え』
『泣いてるんです。急には笑えません』
『では泣け、命令だ』
上から目線の無茶苦茶な命令だけれど、それすらも懐かしくて心地よくて嬉しく思ってしまう。
自分の手を伸ばし、頬に添えられた信長の大きな手をぎゅっと握る。
それからは涙が止まるまで泣いた。
今まで何度か涙を流す機会はあったけれど、この時代に来てからこんなに泣いたのは初めてだった。
涙が止まり、落ち着いてから再び会話を交わす。
『信長様、ここはどこなんですか?』
『ここは富山城だ。上杉の治める城だが今は非常事態という事で休戦し、休むための部屋を借りている』
『富山城……早く安土に帰りたいです』
『ああ、秀吉も待っているからな。傷がふさがったら発つ。それまではゆっくり休め』
頭を優しく撫でられながら目を閉じる。
大きな大きな安心感に包まれて、あっという間に再び眠りについた。