第5章 家康と金平糖
大通りをゆっくり家康と会話しながら歩く。
『……あのさ、前から聞きたかったんだけど…直美、あんた何処から来たの?』
家康からの唐突な質問。
未来から来た事は秘密だから言えない。
だから慎重に言葉を選んで発言しなければならない。
『私ね、実は遠江の出身なの。小さい頃はよく浜名湖や佐鳴湖で遊んだよ』
『!?なんで今まで黙ってたの!そこ、俺の領地だって事分かってるよね?』
『もちろん知ってるよ。隠してたんじゃないけどなかなか言う機会がなくて…』
それは本当だ。
信長様と秀吉さん以外には全くと言っていいくらい自分の話をしていない。
言う機会もなければこうして聞かれる事もなかったのだから。
『そう……直美、あんた信長様に拾われて良かったかもね』
『えっ!どうして?』
『あんたの故郷が有る場所はいつも今川や武田との戦に巻き込まれてる。だから信長様の元にいるのが安全でしょ』
『ん?今川って駿府の今川義元?』
『何その愚問、当たり前でしょ。今川が攻めてきたから信長様と俺が力ずくで駿河と遠江を徳川の領地にしたんだよ。でもそれを恨んでる連中も多くて小さないざこざは日常茶飯事。遠江にいたならそれくらいわかるでしょ』
それってもしかして桶狭間の戦いの事?とは聞けないので知らないフリをした。
聞きたい事が色々あるけど聞いたら自分が未来から来たのがバレそうで何も聞けないのがもどかしかった。