第20章 毛利元就
目を細めて照準を合わせると、急に足元が大きくぐらりと揺らいだ。
(船が沈み始めた、時間がない)
信長たちは傾く船の上で巧みにバランスを取りながらどちらも戦う手を止めない。
そのあまりの気迫に光秀は銃を構えたまま目を奪われていた。
2人が距離を取った後、すぐにどちらからともなく再び刀を交えると高い金属音が鳴り響いた。
それは元就の刀が折れた瞬間だった。
一瞬の隙を見逃さず信長が元就を袈裟斬りにする。
その刀筋は左肩から通り、直美が受けた傷と同じ場所を狙ったものだった。
『これで勝負はついたな』
信長の低い声が響く。
『俺は…まだ諦めない…』
左肩を抑えながら元就は不適な笑みを浮かべる。
信長を睨みながら一歩、また一歩と後ろに下がり船の端まで移動していく。
そして再び船が大きく揺れた瞬間、そのまま身を任せるように海の中に身を投じてしまったのだった。