第20章 毛利元就
圧倒的に不利な状況の中、元就と直美の会話はその後も続いていた。
こちらの考えを悟られないよう光秀に教わった事を実行するしかない。
(とにかく今は時間を稼ぐのが最優先だよね)
そう信じて会話を続けていく。
『帰りたいなら織田軍に帰してやってもいいぞ?』
『でもただで帰すわけないですよね、その条件は何ですか?』
『なかなか鋭いな。条件はもちろん織田信長の首だ』
『じゃあ諦めます。交渉したところで信長様がその条件を飲むわけがないですし、必ず助けに来てくれると信じていますから』
『大した自信だな。それなら越中で買い付けた硝石と煙硝を積み終えたら富山城に向かった兵を引かせ、ただちに安芸に向けて出港する。自分一人のために織田軍が安芸まで助けに来てくれると思うか?』
『絶対に来てくれます!』
光秀は必ず助けに来ると言っていた。
1回目は安土での姫修行中に。
2回目は蔦花を通して。
そして今は織田軍が越中まで来ている。
だからいくら不安になっても直美から希望の光が消える事はなかった。