第19章 白鳥城
『横からすみません。もしかしたらですが一人だけ思い当たる人物がいます』
『貴様、上杉の軒猿か。申してみよ』
『中国地方8ヶ国をまとめる大名、毛利元就です』
その名前に信長と謙信の表情が一変した。
『佐助、どういう事だ』
『先日、毛利元就が春日山に現れたんです。目的は硝石と煙硝の買い付けの様ですが、俺と直美さんが歩いている所を後ろから襲われました』
『あの時の騒動か、景家からは簡単な報告しか聞いていない。何があったか話せ』
少し長くなりますが、と一言添えてから佐助が語り始めた。
『あの日、毛利元就には軒猿をやめて世鬼一族に来いと誘いを受けました。毛利一族お抱えの軒猿の様な集団の事です。もちろんすぐに断りました。
直美さんの事は城下でもかなりの噂になってますから、謙信様の弱点として利用しようとしているのかもしれません。彼女が人質だとは知らない様でした。
これは憶測ですが、今回の狙いは買い付けと同時に越後の偵察、ついでに軒猿の精鋭を引き抜き、上杉軍の弱体化を図る事かと思います。
この先、海に面した越後、越中、越前を攻めた後は必ず安土も狙われるでしょう。
海のある町を船で訪れ硝石と煙硝を買い付けているのは全て戦のためだと考えていいと思います』