第19章 白鳥城
『信長!これはどういう事だ!』
『どういう事か説明して欲しいのはこちらの方だ。上杉、貴様これは何のつもりだ』
信長はそう言うと拾った懐刀を謙信に投げて返した。
『これはあの女に持たせた刀だ。信長、何故お前がこの刀を持っている』
『そこに落ちていたからだ。無惨にも斬られた兵と一緒にな。俺たちも今来たばかりで詳しい状況がまだわからぬ』
もちろん信長も謙信も直美が隙をついて見張りの兵を殺め、火をつけて一人で逃走したとは思っていない。
『この刀でこれ程の傷を負わせるのは不可能だ。それに血もついていない、誰かがあの女を連れ去ったという事か』
『そう考えるのが妥当であろう。貴様、心当たりはないのか?』
信長からの問いに、謙信は直美が春日山城に来てからの事を思い巡らす。
ここで口を開いたのは謙信の横にいる佐助だった。