第19章 白鳥城
『上杉謙信との交渉ですが、直美様を人質にとるにしては引っ掛かるものがありました。こちらの話は一切聞かず春日山に連れ帰ると…おそらく今は富山城にいると思われます』
三成の話を聞き、信長は光秀が今朝送ってきた斥候からの報告を思い出していた。
(直美の秘密を知って利用しようとしているのか、もしくは惚れたか…どちらにしてもこのままにしてはおけんな)
『信長様、いかがいたしますか』
『まずは予定通り支城から攻める。謙信が出てきたらその時は俺が討つ』
『わかりました。出入口の少ない富山城よりは丘の上の支城を拠点にする方が上杉軍には有利です。いきなり激しい戦いになるかもしれません。私は今日中に策の再確認を行います』
三成の案で富山城と白鳥城の両方が見える場所に本陣を改めて設け、2つの城を取り囲む様に織田軍の兵を配置させる。
一部、上杉軍の兵と接近した織田軍の兵との間で小競り合いになったが、幸いまだ大きな戦いには発展しなかった。
夜になり、本陣に光秀が到着した。