第19章 白鳥城
富山城ではバタバタと戦の準備が行われていた。
そんな中、佐助が信玄を廊下で呼び止める。
『信玄様、ちょっといいですか?謙信様の事なんですが……』
『ん?アイツがどうかしたのか?』
『今日、ここに来る前に謙信様と織田軍の石田三成が刀を交えたんです。その時の様子が気になってしまって』
『石田三成が来たのか?』
『はい。直美さんを安土に帰すよう交渉を持ちかけられました。でも謙信様は聞く耳を持たないどころか直美さんに執着してる感じに見えたんです』
『執着ねぇ、まあ、過去に色々あったからな。ずっと閉じていた蓋が勢い良く外れたんだろ。本人はそれに気づいていないみたいだけどな』
『俺は詳しい過去は知りませんが、誰にも傷ついてほしくありません。そのためなら直美さんを逃がす事もありえると思ってください』
佐助は眼鏡をクイッと上げ、真剣な表情のまま信玄との会話を続ける。