第19章 白鳥城
壁に背中を預け、置いてあった書物を開いてみても内容は全く頭に入らず。
いつの間にか眠くなってしまいそのまま目を閉じてしまった。
その日の夜、直美が富山城にいないと気づいた蔦花は城を抜け出して光秀の元に来ていた。
『上杉謙信と支城に出掛けた後、直美ちゃんだけが戻っていません』
『ならば支城にいる可能性が高いだろう』
『富山城にはすでに越後から上杉の援軍が到着しています』
『ではすぐに戦が始まるな。俺は今から織田軍と合流する。蔦花殿は馬に乗れるか?』
『はい』
『文を書いて渡す。今夜はここで過ごし、明日の朝それを持って安土城に向かえ』
光秀はそう言うと急いで文を綴る。
その文は秀吉に宛てた物で、現在の様子と蔦花を直美の客人としてもてなす様書かれていた。
『十兵衛様、ありがとうございます。ご武運を』
『ああ、世話になった。お礼はまた後でな』
蔦花は部屋に残り、光秀は織田軍の元へと向かっていく。
富山城から少し離れた場所ではすでに織田軍と上杉軍の小競り合いが始まっていた。