第19章 白鳥城
その建物の窓は全て板で塞がれ、中の様子はほとんどわからない。
入り口となる扉には外側から閂(かんぬき)が掛けられ、綺麗な造りの割に何か異様な雰囲気を感じる。
扉を開けると謙信に無言で中に入る様に促される。
そしてその中の造りに一瞬言葉を失った。
『ここって……もしかして牢ですか?』
『ああ、身分ある者を入れるための牢だ。ここなら誰の目にも止まらぬ。戦の様子も見えぬ。食事は運ばせるから安心して待て』
(こんな場所で安心なんか出来るわけないじゃない!)
『戦が終わったら迎えに来る』
『ちょっと待ってください!』
そう叫んだ瞬間、謙信に腕を掴まれグッと引き寄せられた。
『謙信様!?』
左右色の違う瞳と視線が合った直後、力強く抱きしめられる。
『お前は人質以上の存在だ。越後に連れて帰る』
『待ってください。安土に帰してください、お願いします』
安土と聞くやいなや、謙信が直美の襟元を押し開いた。
『以前付けられた印は綺麗に消えた様だな。俺が新しく上書きしてやる』
『っ………』
抵抗も虚しく、鎖骨の辺りにチクリと痛みが走った。