第19章 白鳥城
『石田三成、一人で斬られに来たか』
三成と謙信が睨み合う。
(三成くん!?謙信様の背中でよく見えないけど本当なの?)
『上杉謙信殿、貴方を義に厚い方と見込んだ上で一つお願いを申し上げます』
(間違いない!三成くんの声だ!)
『直美様をどうかこちらに引き渡していただけませんか。その方は戦はもちろん、織田軍の政に一切の関わりがありません』
『こちらに何の得もないのに人質をそう簡単に手放すと思うか?』
『直美様を返していただければ、その後は織田軍の撤退でも交戦でも貴方の望む道を選びましょう』
2人は睨み合ったまま一歩も引かない。
『もし断ればどうするつもりだ』
『その時は……力ずくでも直美様を返していただきます』
その言葉を聞いた瞬間、謙信の目の奥がぎらりと光った。
『断る。この女は織田軍には渡さない』
そう言うと謙信は馬から降りて素早く刀を抜き、殺気を込めた一撃を三成に叩きつけた。
『っ……交渉決裂ですか』
瀬戸際で刀を受け止めた三成の体勢が崩れる。
だが、端正な顔を歪めながら謙信の攻撃を押し戻した。