第18章 囲碁勝負
『何故……わかりません』
そう答えるしかなかった。
『わからない?記憶がないという事か?』
『記憶はあります。でもわからないんです』
これにはお互いわからないといった表情になってしまう。
『君は何がわからないんだ?記憶はあるんだろう?あの日の本能寺には信長とその部下数名の他は鼠一匹入れなかったはずだ。一体何を隠している』
意地悪な笑顔も消え失せ、真剣な眼差しで見つめられた。
(やっぱり全てを話すしかないのかもしれない)
『私は……』
そう言いかけたところで、月を見るために少し開いていた襖が勢い良くスパーン!と音を立てて開き切った。
そこに立っていたのは謙信だった。
『謙信様!?いつからそこに!!』
『おい、その話を俺にも聞かせろ』
襖を閉めると信玄の横に座る。
2人からの無言の圧が尋常ではない。
これではまるで蛇に睨まれたカエルだ。
(信長様、秀吉さん、ごめんなさい)
この状況ではもう正直に話すしかなかった。