第18章 囲碁勝負
『姫、慌てないで聞いてくれ。思っていた、過去形だ。つまり帰すつもりはないぞ』
『なーんだ、期待して損しました』
これには心の底からガッカリしてしまった。
『すまないが今夜の勝負も俺の勝ちだな』
前回よりも破壊力の強い心理攻撃を受けて、あまりにも見事な惨敗だった。
『約束ですから何でも一つだけ答えます』
『律儀なところもまた魅力の一つだ』
いつもの優しい笑顔が、今は意地悪な笑顔にしか見えない。
何を聞かれるのだろうかと姿勢を正した。
『今回の質問はあの日の事についてだ』
(きた!あの日ってきっと本能寺で信長様を救った日の事だよね)
『はい、何でしょうか』
『君は……何故本能寺にいたんだ?』
予想通り、今回は誤魔化しのきかない質問をされてしまった。
適当に答えればこの先ずっと嘘に嘘を重ねるだけになってしまう。
嘘を突き通せるほど器用な人間じゃないのは自分が一番良く分かっていた。