第18章 囲碁勝負
思い出したかの様に再び碁石を交互に置いていく。
『長い話に付き合わせて悪かった』
『いえ、私がもしも甲斐の人間であれば信玄様をお慕いしていたと思いますよ』
『今からでも遅くない、俺を慕っていいんだぞ?』
その笑顔は話を聞く前よりも優しく、頼りあるものに見えるのだけれど。
『今は信玄様は信長様の敵だけれど、お話を聞いて悪い人じゃないと分かりました。でも私が帰る場所は安土なんです。ごめんなさい』
それが自分の答えだった。
『帰る場所か……実は戦が始まる前に君を織田軍に帰そうと思っていたんだ』
『えっ!今何て!?』
あまりにも突然の言葉に何を言っていいかわからない。
持っていた碁石が指の間からするりと落ちて部屋の隅に転がっていった。