第17章 富山城
そこからはガールズトークが止まらなかった。
『直美ちゃん、上杉家の正室だって皆の噂になってるよ?』
『ないない!成り行きで懐刀を持たされてるけど、全然正室とかじゃないし。そもそも敵軍の人質なのにさ、絶対ありえないでしょ』
『お似合いの2人だって皆言ってるけど』
『えーっ!どうしたらそうなるの!それより蔦花ちゃん、十兵衛様にからかわれたりしてない?弾の入った銃とか突き付けられてない?』
『からかう?十兵衛様が?全然ないよ!あのさ、十兵衛様って笑顔が結構素敵だよね。眼鏡姿も格好良かったよ!』
『眼鏡!?うっわー、想像できない!けど意外と似合いそう』
『政宗様も素敵だけど十兵衛様も素敵な人だね』
『でも、すっごい意地悪するよ!!』
こういった普通の会話の何と楽しい事か。
時間が許す限りいつまでも話をしていたかった。
だが部屋の外から名前を呼ばれる。
どうやらこれから謙信の部屋に行かなければならない。
『蔦花ちゃん、またお話しようね』
『うん、もちろん!』
蔦花はお膳を下げると買い物があると言って城下に出て行った。
向かったのは城下の外れにある小さな宿屋。
光秀の待つ部屋に真っ直ぐ足を進めた。