第17章 富山城
『十兵衛様、蔦花です』
『よく戻ったな、報告を頼む』
部屋に入るとすぐに先程の会話の内容を伝える。
『それから、直美ちゃんが上杉謙信の正室だっていう話を皆でしています』
『あの軍神が女を連れていたとなれば当然の噂だ、想定内だな』
(だが直美に情を移したとなれば少々面倒な事になるかもしれんな)
『織田軍が3日後には到着するだろう。それまで引き続きこの調子で頼む』
『わかりました』
蔦花は買い物を済ませると再び富山城へと戻って行った。
謙信の部屋に呼ばれた直美。
戦の前に支城に移動する事を伝えられる。
『この城は守りは固いが出入り口が少なすぎる。万が一囲まれて火矢でも撃たれれば逃げる事が出来なくなるかもしれないからな』
謙信なりの気遣いなのだろうか。
こちらとしても戦に巻き込まれるのはごめんだ。
少しでも安全な場所にいられるのならその方がいい。
本当は戦になんかならないのが一番いいのだけれど。
自分の部屋に戻ると信玄が訪ねてきた。
そして数日振りに直美の秘密をかけた囲碁勝負が始まった。