第17章 富山城
富山城は三方を二重の掘りが巡る堅固な造りとなっており、正面の城門の他には小さな裏門が1つあるだけだった。
その裏門から敷地外へ出るには城側から堀に橋となる板を掛ける必要がある。
簡単には侵入出来ない造りになっていた。
西側に4キロ離れた場所には支城である白鳥城が築かれている。
謙信たちが城門の前まで来ると、家臣総出で3人を城内へと迎え入れた。
そのまま広間に案内されると、信玄の元に一人の男が急いで駆け寄り小声で何かを報告する。
そしてそれは謙信と直美にもすぐに伝えられた。
『謙信、織田軍が出陣した。ここに向かっている』
それを聞いた謙信が信玄に鋭い視線を向けた。
獰猛な獣の様な2人の眼差しに背筋が凍りつく。
『すぐに増山城に援軍を要請しろ。この城を包囲されない様、全方向に兵を配置する』
『春日山から幸と佐助が向かってくるはずだ。開戦は早くて2、3日後ってところだな』
(戦になるんだ、それも織田軍と…)
突然の展開に何も言う事が出来なかった。
それからすぐに軍議を行うことになり、謙信と信玄は広間に残った。
直美は自分のために用意された部屋へと案内された。