第16章 増山城
斥候からの報告で生きている事はわかるのだけれど、それはあくまでも第三者からの情報にすぎない。
それに斥候の目の届かない城内での扱いなどは細かく知ることが出来ず、本人の言葉以上に正確なものはなかった。
『あの……もしかして直美ちゃんは何かに巻き込まれているんですか?』
『なかなか感が鋭いな。名前は何という?』
『蔦花といいます』
『蔦花殿、直美のために少しばかり俺の元で働かないか?それなりの報酬を約束しよう。いい返事がもらえるなら両親が青葉城の薬師になれる様、政宗に口添えしてやる。奥州には薬師が少ないからお互い助かるだろう』
『そんな事出来るんですか!?』
『ああ、約束しよう』
蔦花にとって悪い話ではない。むしろ良い話だ。
『私に出来る事があればやらせてください』
こうして翌日、蔦花の両親は青葉城の城下町を目指して2人で出発していった。
光秀は増山城下に留まり、朝から晩まで丸2日かけて間者のいろはを蔦花に叩き込んだのだった。