第16章 増山城
『私、安土城に居候してる直美っていうの。私は元気だから大丈夫って青葉城の関係者から偉い人に伝わる様に何とかして伝えてもらえないかな』
偉い人に伝われば政宗の耳にも届くはず。
最終的には信長に自分が無事だという情報を届けられるはずだ。
たとえ時間はかかっても頼んでみる価値はある。
『城下町に店を出せば青葉城の女中さんたちも来るはずだから、伝えるだけなら大丈夫だよ』
『ありがとう!私、政宗と知り合いだからお礼を何か考えておくね』
『え!政宗様と知り合い?直美ちゃんて何者なの?』
『安土城の居候だよ。でも一緒に来てた人に今の話は内緒ね。じゃ、頼んだよ』
『分かった、任せて。お礼を楽しみにしてるね』
信玄と目が合ったので手招きして呼び寄せる。
増山杉で作られた簪と帯飾りを買ってもらい、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れた。
その数分後、蔦花の店先に現れたのは光秀の姿だった。