第16章 増山城
『謙信様、つかぬ事をお尋ねしますがこちらの女性は?』
『ああ、上杉家ゆかりの姫だ。今は理由あって春日山城にて身を預かっている』
『直美と申します。本日はよろしくお願いします』
『女性と一緒にいるなど珍しくて、つい御正室になられる方かと。失礼いたしました』
(一緒にいるだけで正室候補って思っちゃうの!?)
『気にするな、宗信。今回ここまで足を運んだ件だが』
そこからは兵だの馬だの鉄砲だの、現代人には理解し難い内容の会話が延々と続いた。
難しい話について行けずに信玄の方を見ると、すぐに状況を理解してくれたらしい。
『謙信、姫に戦準備の話は似合わないからちょっと借りるぞ。姫、おいで』
上手く理由をつけて広間から連れ出してもらえた。
『信玄様、ありがとうございます』
『俺も退屈だったからな。さーて、せっかくだから城下町でも歩くか』
『はい!楽しみです』
『ここでは俺たちの事を知る者はほとんどいない。ゆっくり自由に歩こう』