第16章 増山城
それから数日後。
謙信、信玄、直美の3人は春日山城を出発し、越中(富山)にある増山城に来ていた。
道中は謙信の馬に乗せてもらった。
城門が見えると緊張で思わず体が固くなる。
『今この城を治めているのは俺の家臣の男だ。だから気を張る必要はない』
『ここは謙信が3回も戦を仕掛けてようやく落とした城だったな。俺は初めて来たがなかなかいい城だ』
増山城は安土城や春日山城ほど大きくないものの、この城を守るための支城も築かれ、越中の三大山城の一つとされていた。
城の周辺は増山杉に囲まれ、杉を使った工芸品が城下の店先に並ぶ。
杉の木を加工するところが至るところにあるのか、城下も増山城も杉の香りで満たされていた。
城の中に入ると謙信は迷わず広間へと進み、脇息の置かれた上座へ向かった。
(城主じゃないのに上座なの!?やっぱり謙信様ってかなり凄い人なんだ…)
直美は謙信の横に座る様、案内される。
信玄は2人が座ったのを確認すると廊下に控えていた人物を広間に通した。
吉江宗信と名乗るその人物が謙信の正面に正座し、平伏したまま挨拶を始める。
どうやらこの人が城主らしい。
頭を上げる様に言われると視線はやはり直美に向かっていた。