第15章 再び城下へ
姿勢を正し、覚悟を決めて質問されるのを待った。
何を聞かれるのかドキドキする。
たった少しの静かな時間がとても長く感じられた。
『では聞こう。君はどこから来たんだい?』
信玄からの短い質問は核心をついているのかいないのか読む事が難しい。
まるでこちらの出方をじっくり見ている様にも取れるものだった。
(どこから?500年後から…とは言えないし、安土からって言うのも変だ。正直に出身地を答えて納得してもらえるといいけど)
こちらが言葉の裏を読んだところで裏の裏を読んでいるはず。
武田信玄とはそういう男だ。
ここは百面相になる前に、素直に言葉通りの返事をする事にした。
『どこからという質問なら、答えは遠江です。信玄様が家康と戦った浜松、三方ヶ原の近くに住んでいました。近くに川があって、蛍の光が綺麗なとても静かな場所です』
『そうか、あそこらの土地は海も山も近くて綺麗な川もある。戦場にさえならなければ良い所だな』
『はい』
(よしっ、今回は何とか切り抜けたかな)
『出身地については分かった。遠江にいて戦に巻き込まれなかったのは幸運だったな』
『私の故郷は今川家との確執もあってとにかく色々複雑なんです』