第15章 再び城下へ
『複雑か、そうだろうな。遠江は元々は今川の領地だよな。それが戦で徳川の領地になり、そこに今度は強くてカッコいい武田軍が攻めてくる。確かに複雑だ』
『強くてカッコいいって自分で言っちゃいますか!』
『実際そうだろう?それに徳川から武田に寝返ろうとした民もいたと聞いた。誰につくかはとても大事な事だ。それは町や村で暮らす民も、俺たちの様な武将も同じだ』
安土にいるみんなの姿を思い浮かべた。
そして佐助や幸村の事も。
『でも強いとか、カッコいいだけじゃ誰もついて来てはくれないですよね』
『ああ、そうだ。大事なのはどんな方法で何を成そうとしてるかだろう。貧弱な思想では誰もついてこない。民も家臣もな』
『ん?それは暗に信長様の事を認めているようにも聞こえますけど…』
『そう聞こえたならそれでいい。だが信長は俺の敵であることに変わりはない。必ずこの手で討ち取るつもりだ』
出身地を問われた質問が全く違う方向に飛んでいった気がする。
未来から来たことはどうにかバレずにすんだけれど、心が晴れない感覚に陥っていた。
(ちゃんと認めているのに手を取り合う事はできないんだ、これはこれで複雑だな…)