第14章 春日山
『ふふっ!じゃあ一緒にお城に帰らないとだね』
佐助に金平糖を預け、ウサギを両手で抱っこしようと手を伸ばした。
が、ウサギは非常に警戒心が強い。
それはこの時代も500年後の時代も同じだ。
当然の様にピョンピョン跳び跳ね、どんどん遠ざかっていく。
『あっ!ちょっと待ってー!』
気がつけば3人で全力疾走しながら追いかけ、いつのまにか再び城下の大通りまで戻ってきてしまった。
ウサギは疲れたのか道の真ん中にちょこんと座ったまま動かない。
『佐助は右から、直美は左から、俺は向こうに回り込むから挟み撃ちにして捕まえるぞ』
『うん!』
しかしウサギは3人のいない方向に巧みに逃げていく。
これを繰り返す事数回。
(うわぁ、もう疲れたし追い付かないよ…)
息を切らしながらそう思っていると、一人の男が自分の足元に近づいてきたそのウサギをいとも簡単に抱き上げた。
『やった!捕まえてくれてありがとうございます!』
『こいつ、あんたのウサギか?』
『えーと、厳密には違いますけどそうです』
『は?面白い女だな』
男の手からウサギを受けとる。
『しっかり捕まえとかないと食われちまうぞ』
男は後ろにいた幸村と佐助を目を細めて見ると、直美にじゃあなと言ってその場を去って行った。
『佐助、今の奴見たか?』
『ああ、常に刀を握っている者と同じ手をしてた。念のため警戒しといた方がいいだろう』
ウサギを両手でしっかり抱くと、今度こそ春日山城に向けて3人で歩き始めた。