第14章 春日山
『幸村、直美さん、謙信様への土産も買いたい』
『ああ、梅干しだろ?』
『謙信様に梅干し?』
これは何だか意外な組み合わせだ。
『直美さん、謙信様は酒と梅干しで生きているんだ』
『待て待て!他にも何か食ってるだろ!…って、よく考えたら見たことねーかも…』
そんなはずあるわけないのだけれど、佐助から言われると妙に説得力がある。
『梅干しは疲労回復にはいいって聞くし、お酒にも合うと思えば合うよね。もちろん付き合うからみんなで買いに行こ!』
しかしお店に入るとまたもや驚きの注文を目の当たりにする事になった。
『この梅干し、300個程持ち帰りでお願いします』
『300?佐助君、ちょっと買いすぎじゃないの?』
『いや、普段と全く同じだけど』
(やっぱりこの人たち変!絶対変だよ!!)
全ての買い物を済ませ、城に続く城門をくぐろうとした時だった。
『あ!見て見て!ウサギがいるよ!可愛いなぁ、こっちにおいで~』
3人の視線の先には毛がふわふわの真っ白なウサギがいる。
『こいつ、城から逃げ出してきたな』
『春日山城から?どういうことなの?』
『直美さん、このウサギは謙信様が飼っているんだ』
『正確には勝手に住み着いてなついてるだけらしーけどちゃんと世話してるぞ、俺と佐助が』
2人がウサギの世話をしている姿を想像してしまい、あまりの緊張感のなさに笑いが込み上げてきた。