第14章 春日山
『ねえ、この懐刀、一体どうしたらいいかな』
『とりあえず今はそれ持ってろ。んで、昨日言ってた挨拶回りが終わったら景家には内緒にして謙信様にこっそり返せばいい』
『俺も幸村の意見に同意だ。それが一番いい方法じゃないかな。協力するから今は我慢して欲しい』
そんな会話をしていると、あっという間に城下に着いたのだった。
安土とも小田原とも違う城下の様子は新鮮だ。
生活に必要な物を買いに来たといっても直美が春日山城に来ることを先に想定していたためか、着物や簪、書物や茶器などはすでに十分な量が春日山城の部屋に届けられていた。
そのためこれといって特に今すぐ必要な物が見つからない。
欲しいものを強いてあげるなら安土を思い出す事の出来る金平糖くらいだ。
城下町をぶらぶらと歩いた後は甘味屋に寄って金平糖と信玄への手土産を買っていく事にした。
店に入るとまずは金平糖を選んで店主から受けとる。
そして幸村による驚きの注文を目の当たりにした。
『じゃあ、これとそれとあれとそっちの白いのと、あとはあっちの丸いのと四角いのを2個ずつ包んでくれ』
『え!幸、ちょっと買いすぎじゃない?』
『そーか?いつもこんな感じだけどな』
(あ、甘い!甘すぎる!いろんな意味で!!)
支払いを済ませ、両手に荷物を持って甘味屋を出た。