第14章 春日山
そして翌日
『幸、城下まで出るなら忘れずに甘いものを買って来てくれよ』
『何言ってんですか、あんた毎日食ってるんだから1日くらい我慢してください。直美、佐助、さっさと行くぞ』
今日は春日山城で生活をするのに必要な物を3人で買いに行く事になった。
城から一歩も出してもらえない可能性だってあるのに、こんなにあっさり城下町に行かせてもらえるなんてとても意外に思える。
もちろん佐助と幸村が一緒なので逃げようと思ってもほぼ不可能に近いのだけれど。
信玄に見送られると城下への道を進んだ。
この2人と歩きながらの会話は緊張感が全然なく、逃げようなんて思えないくらい楽しいものだった。
『直美さん、昨日は良く眠れた?』
『ううん、全然!景家さんのせいで全然寝れなかったんだよ…』
『は?まさかアイツに何かされたのか?』
『そんなんじゃないんだけど、寝る前に謙信様の部屋に通されてこれを渡されて……』
そう言って2人に姫鶴一文字の懐刀バージョンを見せる。
『アイツ、本気だな』
『細部までしっかり作り込まれてる。これは凄い』
2人はそれぞれの反応を見せた。
『佐助、感心してる場合じゃねー。こんなの持ってるって事は、自分は謙信様の女ですって言ってるのと同じなんだぞ』
『それはある意味光栄な事だけど、織田軍に知られたら戦になるかもしれないな』
『戦!?そんなの困るよ!』
『そのくらい影響力がある刀だって事だ。お前、面倒なのに目をつけられたな』
まさかそんな物を渡されるなんて。
それも一時も離すなだなんて。
ニコニコしていた景家に完敗した気分になった。