第14章 春日山
『直美様にお渡ししたい物がございます』
ニコニコした景家の表情から嫌な予感しかしない。
謙信の部屋に通されて渡された物。
それは謙信が愛用している刀、姫鶴一文字の懐刀バージョンだった。
『あの……何ですか、これ?』
『謙信様とお揃いの懐刀にございますよ』
『はい?』
『しばらくは上杉家ゆかりの姫として役目を果たしてもらう。この刀があれば誰も安土の人間だとは思わぬだろう』
『そういう事ですから一時も離さないでください』
『……はい』
(何もお揃いじゃなくてもいいのに!)
完全に景家にやられた!!そんな気がしてますます眠れない夜になってしまったのだった。