第14章 春日山
『戦はいいとして、直美の部屋はどーすんですか?』
少し不安そうな直美の表情を見て、幸村がさりげなく話題を変える。
『案ずるな。信玄と話し合ってこの城で一番安全な部屋を用意した』
その後、広間を出て信玄に案内されたのは謙信の寝室の隣の部屋だった。
『安土と小田原にいたなら分かると思うが、城主の側が一番安全なんだ。それにここじゃないなら牢に入れるって謙信が聞かなくてな』
『牢!?こっちの方が全然いいです!』
人質だから牢に入れられても不思議ではないのだけれど、体と心への負担を考えたら部屋の方が絶対いいに決まってる。
それがたとえ理解し難い謙信の隣の部屋でもだ。
『必要な物があったら何でも言ってくれ。じゃ、また明日、おやすみ』
甘い声でおやすみの挨拶を言うと信玄は自分の部屋へと戻って行った。
久しぶりの一人の夜はあまりにも環境が変わりすぎてすぐには寝付けない。
襖を少し開けて部屋の中から月を眺めていると、謙信と景家が並んで歩いているのが見えた。
そして2人は直美の部屋の前で立ち止まる。