第14章 春日山
これからの予定について謙信が話し始めた。
『信長との戦いの前に周辺の同盟国に挨拶回りに行く。その方が文を一通送るより何倍も兵を集められるからな。この女も一緒に連れて行く』
『謙信、この女じゃない。天女だ』
『謙信様、この女じゃねー。直美です』
『みんな違います、直美さんです。さんが抜けてます』
そう言いながら広間に入ってきたのは佐助だった。
『佐助君!無事だったんだね、良かった』
(皆が言っていた通り本当に大丈夫だった!)
『遅くなりました。織田軍が北条氏政を連れて安土に戻ったのを確認してから戻りました』
『佐助、あとから鍛練に付き合ってやる』
『飲んでますけど手加減しませんよ』
佐助は眼鏡をクイッと上に上げると無表情で幸村の横に座る。
(帰って早々、大変そう。それに知れば知るほど変わった人たちだな)
佐助が座るとすぐに会話が再開された。
『謙信、天女を連れていくのか?』
『兵を集めるための餌だ。酌でもさせて大名の機嫌を取ればより多くの兵が集まるからな。信玄、お前も一緒に来い』
(餌!?他に言い方ないの?断ったら斬るとか絶対言うよね、ますます理解し難いな…)
『ま、ずっとここにいるよりは気分転換になっていいかもしれない。織田軍も北条と戦った直後だからすぐには行動を起こさないだろう。こちらも今のうちに楽しい戦の準備だな』