第13章 それぞれの戦い
謙信たちが氏政の部屋を目指している時、織田軍は天守を目指していた。
小太郎と仲間が北条の兵を次々斬り伏せたおかげで一気に形勢が逆転していく。
北条の兵がわずかになると小太郎は仲間を引き連れ、織田軍に悟られない様に素早く城を離れ去って行った。
『強行突破してでも急げ!』
信長の声が響く。
2発も聞こえた銃声にさすがに焦りの色が隠せない。
政宗を先頭に天守に向かって走って行くが、時すでに遅く。
そこにいたのは両肩から血を流しながら壁にもたれて座る氏政だけだった。
一番先に天守にたどり着いた政宗が氏政に詰め寄り胸ぐらを掴む。
『お前、北条氏政か!何があったか言え!直美はどこだ!』
すぐに政宗に追い付いた信長が氏政に刀を向ける。
秀吉、家康も後ろで刀に手をかけている。
『安心しろ。銃は向けたが弾は外れた。2発目の後、越後の龍と甲斐の虎が来て連れて行った。おそらく今頃は城の外だ』
それを聞いて信長が口を開いた。
『行き先は春日山城だろう。全員一度安土に戻る。
秀吉、こいつを安土の地下牢に幽閉しろ』
北条との戦いは織田軍の勝利という事で終結した。
だがここからが本当の戦い。
北条はただの横槍に過ぎないのだから。
織田軍勝利の報告を安土で聞いた光秀は、その日のうちに斥候を春日山に向けて発たせたのだった。