第13章 それぞれの戦い
『あ、そういえば小太郎から直美に伝言を頼まれてるぞ』
『小太郎さんから伝言?』
移動しながら幸村がその内容を伝える。
『新しい土地で里を再興したら挨拶に行くからそれまで達者でな、だそーだ』
『そっか、じゃあもうしばらく会えないんだ。怪我も心配だしさよならも言えなくて残念だけど元気でいてくれるといいな』
幸村に伝言を頼んだ後の小太郎の気持ちは直美の事を想いながらも里の再興と再会を願う前向きなものだった。
(小太郎さん、ありがとう)
心の中でお礼を言いながら下の階を目指して進んだ。
幸村を先頭に氏政の部屋に向かう途中、少し離れた場所から信長が指示を出す声が聞こえてくる。
壁の向こう側から聞こえる懐かしいその声に思わず名前を叫ぼうとしたのだけれど。
『の…………』
声にならない。
考えていた事はお見通しだった様で、すぐに信玄の大きな手で口を塞がれてしまう。
『悪いが大声を出したら君の命を保証出来なくなる。黙ってついて来てくれ』
耳元で優しく囁かれる様に言われ、ただ頷く事しか出来なかった。