第13章 それぞれの戦い
氏政の部屋の隠し通路を使って無事に外に出た4人。
今は直美が誰の馬に乗るかで揉めている。
『天女は俺の馬に乗ればいい。絶対に落ちない様、後ろからしっかり支えてあげるよ』
『え、遠慮しとこうかな』
(セクハラしてきそうだもん!)
『信玄様、直美に警戒されてますよ。直美、俺の馬に乗るか?1度も人を乗せて走ったことねーけど』
『うー、それもちょっと……』
(人を乗せたことないのに誘う!?落ちたらどうするのよ!)
『ならば俺の馬に乗せてやる』
『え……』
『早くしろ』
(他の二人を拒否した以上、選択肢はないよね…謙信様がいろんな意味で一番安全だと信じよう)
謙信の手を借りて馬に乗る。
着物では足が開かないため横乗りでかなり不安定だ。
『怖かったら俺にしがみついていろ、行くぞ』
片手で手綱を握り、もう片方の手は直美の腰に回して落ちない様支える。
(謙信様ってこんな人だっけ?調子狂いそうだな)
『俺、あの謙信様が女を馬に乗せるなんて初めて見ました』
『幸、俺もだ。それもあんなに密着して…羨ましい』
『何言ってんですか…』
全員が馬に乗ると4人は春日山城に向けて出発した。
先ほどまでの大雨もいつの間にか止み、馬はどんどんスピードを上げて駆けて行った。