第13章 それぞれの戦い
『幸、織田軍はどこまで来てた』
信玄が戻ってきた幸村に戦況を確認している。
『えーと、一番下の階の中央に信長と独眼竜、そのすぐ後方に徳川と豊臣。全員城の中です』
『そうか、4人一度はさすがに骨が折れそうだ。最初の計画通り、一旦ここを出た方がいいな』
『おい、信玄。まさかこのまま春日山に帰るのか?まだ信長と刀を交えていないのだぞ』
謙信が不満そうに言う。
『謙信の気持ちはよく分かるが、ここは一旦引いた方が後からもっと楽しい戦を仕掛けられるぞ?』
楽しい戦という表現に謙信が分かりやすく反応した。
『その言葉に嘘があれば斬るからな』
『信玄様、この階の北側に格納式の階段があったはずなんでそこから降りて氏政の部屋の隠し通路を使えば織田軍と接触せずに裏の森に出られます』
城の見取り図を自作しただけあって、幸村の頭の中にはしっかりとどこに何があるのか記憶されていた。
『待って!佐助君を置いて行けません!』
唯一の現代人仲間の佐助が氏政の見張りのため、まだ天守に残っている。
一人だけ残していくのは心苦しい。
『あいつなら心配いらん。俺がこの4年で軒猿として鍛えてやったからな』
『謙信様の言う通りだ。あいつ、変な奴だけどこういう時は信頼出来るから大丈夫だ』
『天女、まさか佐助に気があるんじゃないだろうな?俺の方がいい男だぞ?』
『そんなんじゃありません!』
結局、佐助をそのまま天守に残し、下の階へ急ぐ事になった。
(佐助君、4年間かなり頑張ったんだろうな。こんなに信頼されて本当に凄いよ)