第13章 それぞれの戦い
『もう返してください!届きませんっ!!』
『信玄様、直美さんで遊ぶのはやめてください』
『すまんすまん、天女の反応が可愛くてな』
そう言うと信玄は左手で直美の手首を掴んで引き寄せた。
『さあ、捕まえたぞ。正確には君から捕まえられに来てくれたんだが』
『えっ?』
何を言われているのかすぐには理解出来なかった。
『そんな事しなくても刀で脅せば一瞬だろう』
『直美さん、謙信様も信玄様も女性を傷つけることはしないから安心して』
佐助の言葉にやっと何が起きているのか理解できた。
(しまった、この人たちは信長様の敵だったんだ!完全に空気に流されちゃった!私、捕まったんだ…)
『佐助の言う通りだぞ。優しく口説いて愛でるだけだから心配いらない』
『……心配しかないです』
『おい、ここは織田軍と戦うには狭い。場所を変えるぞ』
謙信の鶴の一声で天守から出る事になり、ちょうど戻ってきた幸村と合流する。
天守には動けなくなった氏政と見張りのための佐助を残して下の階へと移動した。