第13章 それぞれの戦い
直美は氏政に近寄り目を合わせる。
『氏政様、もし信長様が先に天守に来たらあなたを殺させません。この国が良くなっていくのを見届けて欲しいんです。
それに生きていたらいつかまた一緒に囲碁の勝負が出来るかもしれません。お酒だって飲めるかもしれない。だから死なないで欲しい』
その言葉に一つも嘘はない。
もし光秀に聞かれていたら甘すぎると笑われる事だろう。
それでも命だけは大切にして欲しかった。
『優しいのだな。お前のことは遠くから見ているだけに留めておくべきだったのかもしれん』
そう言って笑った氏政の表情は今までで一番穏やかに見えた。
『だが運は俺に味方しなかった様だ』
氏政の表情が急に一変する。
その視線の先に捉えたのは謙信と信玄の姿だった。