第13章 それぞれの戦い
幸村は直美を背中に庇いながらこの状況をじっくりと見極めていた。
(氏政のやつ、囲碁はめちゃくちゃ弱かったけど刀の扱いはかなりのもんだ。隙を見せたら一気に流れが変わるな)
広いとは言えない天守の中で身を翻しながら刀を激しく交える2人に完全に目を奪われていた。
(っと、見とれてる場合じゃねー。何とかしてここから出ないと巻き込まれるぞ)
しかし下の階ではまだ氏政の家臣と小太郎の仲間が戦っている。
自分一人ならともかく、こちらは二人。
素早く天守の内鍵を外しても無事に脱出できるかどうかは不透明だ。
そんな事を考えていると今までとは違う金属音が天守に響いた。
2人の刀が同時に折れた瞬間だった。
氏政と小太郎はお互い睨み合ったまま視線を逸らさずに距離を取る。
折れた刀をその場に捨てると小太郎は懐からクナイを、氏政は銃を取り出し身構えた。
幸村と直美が息を飲んだ瞬間、小太郎が氏政に素早くクナイを投げつける。
と、同時に乾いた銃声音が響き渡った。