第13章 それぞれの戦い
天守からの銃声音は織田軍にも上杉武田の2人にもはっきり聞こえていた。
全員がただならぬ空気に表情を曇らせるが戦う手は止めない。
総石垣造りの小田原城は下から攻める側にとっては不利な造りになっているため、織田軍でさえも城の敷地内から城内に入り込むのに手間取っていた。
上の階の格子窓からは無情にも弓矢の嵐が降り注ぐ。
それを刀で叩き落としながら少しずつ前進して行った。
『全員急げ!一気に天守まで駆け上がり氏政を引き摺り出して始末する!』
信長の声に織田軍の士気が上がっていった。
謙信と信玄の2人にも銃声が聞こえたが何が起きているのか全くわからない。
雨の中、刀を振るいながら謙信が佐助に命令する。
『佐助、先に天守の様子を見に行って何が起きているのか報告しろ。お前ならそのくらい容易いだろう』
『わかりました。一旦ここを離れ、屋根を伝って天守に向かいます。状況を見て幸村と直美さんの身の安全を優先させます』
信玄も佐助と目を合わせると頼んだぞという表情をして佐助を送り出し、北条の兵に斬りかかっていった。