第13章 それぞれの戦い
氏政を睨んでいる小太郎の眼光はこれまで見たことがないほど鋭く、そして険しい。
『卑怯なやり方で人を支配し、利用する北条には天下統一など到底無理な話でしょう』
一瞬の沈黙の後、どちらからともなく踏み込んだかと思うと刀のぶつかり合う音が何度も天守に響いた。
幸村の背中越しで氏政と小太郎が刀を交える姿は直美にはとても衝撃だった。
だがこれまでの小太郎の言動を振り返ると腑に落ちる部分があるのも事実で。
小太郎と最初に会った時に謝罪されたのは、命令されて仕方なく直美を連れ去ったからだと今なら理解が出来る。
氏照から直美を救い出した時も、北条が天下統一をするなど滑稽だと名指しで避難していた。
思い返せば思い返すほど小太郎が北条家に対して心からの忠誠を誓っていたとは思えない。
里の事を一番に考えて北条に仕えていた小太郎の事を思うと、目の前の光景から目が離せなくなっていた。