第13章 それぞれの戦い
氏政が再び内側から鍵を掛ける。
緊張感が漂う天守の中、先に口を開いたのは氏政だった。
『銃を向けたがお前を殺すつもりはない。一体どんな反応をするか見たかっただけだ』
(うわ~っ!最低!超悪趣味!!)
『言っておくが北条にとってまだ今は不利な状況ではない。だから織田や上杉などと交渉する気はないだけだ』
(どう見ても不利な気がするのに何か策があるの?)
『どうなさるおつもりですか?』
『もうじき小太郎が仲間とともに城に戻る。風魔の精鋭が集まれば軍隊一つくらい簡単に潰せる。
織田軍と上杉武田を後ろから急襲し、いよいよ北条が天下を統一する時が来たな』
(小太郎さんみたいな人が何人もいたら……)
そう考えると思わず身震いした。
『天下統一を果たした後はお前を正式に俺の正室に迎えるつもりだ』
『えっ!!』
(このままじゃ正室にされるって幸が言ってたけど本物にそのつもりなの!?)
『ま、待ってください!交渉!交渉しましょう!』
思わず焦ってしまった直美を見て氏政は楽しそうな表情を浮かべた。
『銃を向けても全く動じなかったのに、急に動揺し始めたな』
(いけない、素の自分が出ちゃいそう…)
『で、では本当に氏政様が天下統一を果たした時は言うことに従います。でも、もしもそうならなかった場合は私を安土に帰してください』
『いいだろう、約束してやる。交渉成立だ』
そう言うと氏政は直美の腕を掴んで引き寄せ、着物の襟元を押し開く。
あらわになった鎖骨に素早く口付けた瞬間、そこにチクリと痛みが走った。
『!!』
『これは約束の印だ。消える前に天下統一を果たしてやる』
(私の知っている歴史では北条家は天下を統一出来ない。だからきっと大丈夫)
体に印を付けられてしまったものの、何とかこの場をやり過ごせた事にほっと胸を撫で下ろした。