第12章 幸村のターン
幸村と直美が城下町に出た日。
氏政の帰りが遅いと聞いていた直美は氏政の部屋の中を隅々まで観察する。
こんなチャンスは滅多にない。
(駿府城にむけて出陣するって言ってた。他にも何か情報を掴めないかな)
部屋をゆっくりと見回す。
すると壁に飾られた掛け軸が不自然に斜めに傾いているのに気がついた。
(あれ?曲がってる。直しておこうかな)
まっすぐに直そうとして近づいた瞬間足を滑らせて転びそうになり、体を支えようと掛け軸の真横に思いっきり両手を伸ばした。
その瞬間ー
壁がくるりと回転し、体がそのまま壁の向こう側へと傾いていく。
『わああっ!!』
支える物がないため両手を前に出したままの姿勢で倒れてしまった。
(何これ、どうなってるの?)
廊下にいた幸村が直美の声を聞いて部屋に飛び込んでくる。
『おい!大丈夫か!』
すぐに近寄ると片手を差し出し直美を立たせる。
『大丈夫。それよりこれ、何だと思う?』
『これは間違いなく隠し通路だ。城主の部屋にあるのは何も不思議な事じゃねー。だけどよく見つけたな』