第12章 幸村のターン
『ねぇ、これってどこに繋がってるんだろう?』
通路の中は数メートル先も見えないくらい真っ暗だ。
『……行ってみるか?あいつ、まだ忙しいから戻ってこないんだろ?』
『うん、行ってみよう!明かりを持ってくるね』
急いで新しい蝋燭に火を灯して持って行く。
『よし、俺が先に行く。手、繋いでやるから足元に気を付けろよ』
すっと差し出された左手を握った。
右手は何かあったらすぐに刀を抜ける。
幸村のさりげない気遣いに感謝しながら2人で通路を進み始めた。
突然現れた隠し通路を進むのはまるで冒険でもしている様な気分で。
何があるかわからないからドキドキしたけれど、幸村がいたおかげでワクワクする気持ちが勝っていたかもしれない。
(幸は信長様の敵だって言ってたけど悪い人には思えない。敵イコール悪者って一方的に決めつけるのは違うのかな。何のために戦うのか機会があったら聞いてみよう)
通路を進み、外に続く扉を開けるとそこは小田原城の裏にある森の中だった。
『やっぱり城の外に繋がってたか。城主が逃げ出すための隠し通路で間違いねーな』
まさかそんな物が本当にあるなんて。
『いい物見つけたな。もし予測不能の事態になったらこの通路を使うぞ』
『うん。分かった!』
2人は再び通路を戻り、その後は氏政が戻るまで何事もなかったかの様に過ごした。