第12章 幸村のターン
『で!本題に入るけど』
幸村の表情が急に真面目なものに変わる。
『数日以内に謙信様と信玄様が小田原城に攻撃を仕掛けるはずだ。俺たちは城内が混乱してる隙をついて城から脱出するぞ』
『攻撃?小田原城が戦場になるの?』
『いや、騒ぎに乗じて逃げる計画だからそこまで大きな事にはならねーよ、多分だけどな』
『幸、私は何をしたらいい?』
『そうだな、お前は俺の背中に隠れてろ。護衛だからちゃんと守ってやる』
『分かった、ありがとう』
(できれば脱出した後、安土に送ってもらえると嬉しいけど信長様は敵って言ってたし、ちょっと厳しいかな)
小田原城を脱出した後の事が気になっていたけれど、まだそれを口に出来る段階ではないと思って言葉を飲み込んだ。
『なあ、全然関係ない話だけどさ……』
『ん?何?』
少し間をおいてから幸村が話し始める。
『氏政ってめちゃくちゃ囲碁が弱くないか?』
『あ!!それ、私もずっと思ってた!!』
『今朝、初めて手合わせしたけど何度やっても同じ結果でさ』
『私も毎晩の様に勝負をしてるけど1度も負けた事がないよ』
『あいつ…………馬鹿なのか?』
『そんな事言ったらさすがに失礼でしょ!弱いのは囲碁だけで、刀での勝負にはめちゃくちゃ強いかもしれないよ!』
とは言いつつも本当は幸村と同じ事を考えていた直美だった。