【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】
第2章 先輩の俺
「全く…勇利とデコが、今取材でここにおらんから良かったものの、特にデコが見てたら、ユリオくんにどんなちょっかいかけてたか判らんかったわ」
「だが、今のユーリなら昔ほど毛を逆立てる事はないと思うがな」
「確かに、この頃のユリオくんは以前よりは随分落ち着いて来とるけど」
「ユーリもロシアの成人年齢に達したし、年下のアレク相手に色々と自覚が出てきたようだ。これで俺も、漸くアイツの堂々巡りな恋愛相談から解放されるから、肩の荷が下りた」
「そうなん?」
わざとらしく肩を竦めたオタベックに、純は目を数回瞬かせる。
「特にGPS以降のメッセや電話の話題は、カツキに敗れた事より、アレクについてばかりだったからな」
「あら…そら、オタベックくんもしんどかったなあ」
「最後の方は流石の俺もうんざりしてきたから、これだけ伝えてやったんだ。『思ッテルダケデ何モシナインジャ、愛シテナイノト同ジナンダヨ。愛シテンナラ、態度デ示セヨ』」
やや芝居がかったオタベックの怪しげな日本語を聞いた純は、思い切り虚を突かれた顔をした。
「…ようそんなん知ってたなあ」
「一時期、ハマってネットで観てた事があるんだ。勿論ユーリにはロシア語でだが。他にも言えるぞ。『アタクシ、生マレモ育チモ、東京ハ下町デゴザイマス』…」
日本の古き良き映画の名作シリーズの主人公を演じるオタベックに、純は無防備に吹き出した。
【エピローグ】
「昨日はよく眠れた?それにしても、すっごい豪華なトコ泊まってるんだね」
「正直俺も驚いた。何でも、スポンサーの意向らしいけどな」
都内のとある外資系ホテルのロビーで待ち合わせをした礼之とユーリは、まずはユーリの目的地の1つであるホテル近くのTV局で一頻り好奇心その他を満たし、その後は時々休憩を挟みながら東京巡りを楽しんでいた。
昨夜は帰宅してから今日の服装その他に悩んでいた礼之だったが、結局「無理に背伸びをするのはやめよう」とスリムパンツとセーターの上に、お気に入りのフードのついたチェック柄の丈の短いダッフルコートという出で立ちで向かった。
一方のユーリは全体的に大人し目な恰好で、髪を無造作に束ねた上に帽子を被り、更に伊達眼鏡をかけていた。
「ちょっとだけ雰囲気変えてみた。変なのに邪魔されたくねぇし」
「良く似合ってるよ」