【イケメン戦国】プレゼントを探せ!~徳川家康誕生祭②~
第6章 【一月三十一日 夜】~御祭騒ぎ~
ぱたぱたと、足早に過ぎる広間への廊下。
準備をなるべく急いだつもりだったけれど、仰ぎ見る空はすっかり真っ暗だ。
所々瞬く星がきらり、と、何もない夜空に映える。
皆待っているだろうな、とはやる心のまま、最後の渡り廊下を駆け抜けると。
直線コースの先で此方を見ている、見慣れた姿――
「いえやすっ!」
家康は、何故か私の顔を見て一瞬息を呑むも、すぐさまいつもの仏頂面に戻った。
「…先に、一度は入ったんだけど。あんたが居なかったから、出てきたんだ…
ばたばたと、まだ用意の最中で騒々しくて」
「そうなんだ、帰りも夕方ぎりぎりだったもんね」
そう言って、向かい合ったきり。
広間の戸すら開けようとしない様子の家康に、首を傾げる。
主役を差し置いてまさか私が先に入るのもな、と思い様子を伺うと。
薄っすらと朱に染まった家康の顔に気付き、伝染したように私まで熱が上がる。
「千花、あんたは…」
何かを決心したように、少し距離を詰めた家康が。
真っすぐに此方を見つめ、問いかけるように声を上げたその時。
「家康、そこにいるなら早うせい」
こちらでのやり取りがまるで見えているかのような、絶妙なタイミングで信長様の声が響き。
はあ、と家康はため息をついた。
「…家康?いいの?」
「いい、別に大したことじゃ…ない、し。
それより、ほら。入りな」
家康が広間の戸を開ける。
いつもより多く灯の点った部屋は明るく、仄暗い廊下にいた私は目を細め。
宴の雰囲気に誘われるように、足を踏み入れる――