【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第10章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜後編※R18
火鉢の音が、部屋に響く中……
私は口を動かす。
「身につけて貰える物で、少しでも心も体も安らぐような贈り物がしたかったの」
「心も……身体も……」
「うん……。あのね、生まれた日にだからこそ、伝えたくて。もっと自分を大切にして欲しいって。もっと自分を好きになって欲しいって」
私は目を閉じて、
この匂い袋に込めた想いを口にする。
無理したり、我慢せずに、疲れた時は少しだけでも良いから、休んで欲しいと。家康は人にも厳しいが、自分に対してが一番厳しい性格なのを知っていたからこそ……
胸に額を引っ付けて……
しっかりと視線を繋いで、
「人に厳しい時は、ちゃんと優しさがこもってる。でも……家康が自分に厳しいのは、ただ厳しいだけだから……」
キュッと辛子色の襟を掴む。
「ひまり……」
少し涙ぐんだ声が出てしまった、込めた想いが強いからこそ。家康は心配してくれたのか私の後ろ髪を撫でてくれた。
少し隙間をつくり顔を上げ、
ありったけの想いを伝える。
「自分にも優しくしてあげて。皆んなが大好きな……私が大好きな家康を、家康自身も大切にして欲しいの」
この匂い袋の香りで、
今日のことを思い出して欲しいと。
捻くれ者でも天邪鬼でも、そこに隠れた底知れない強さと、優しさを皆んなは知っているからこそ、誕生日を祝いたかった。
自分を大切に。自分を知り。
自分の存在を愛すること。それは簡単な事ではなく、とても難しい事なのは理解した上で、それでも、少しでも……伝えたかった。
「たまにで良いから……。自分自身にも優しさっていう贈り物をしてあげてねっ」
私は最後にふわりと微笑む。
すると……
「…っ……ほんと……かなわない」
ぎゅっ。
「その少し潤んだ瞳とか、いじらしくて可愛い過ぎ」
家康はそう囁いて腕に力を込める。
「それはひまりも同じ。すぐ無理する癖に……」
しかし、その言葉の先はなくて……また、別の日に伝えると言われた。
「……今は、早く触れたい」
家康の熱っぽい真っ直ぐな視線。唇を優しく親指の腹で撫でられて……
心臓が熱くて飛び出しそうになる。
「……大切にする……なら、今夜は……」
「ん、……っ…」
重なる唇。