【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第10章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜後編※R18
けれど家康は私の手首を掴むと素早く引き、自分の胸の中に引き寄せた。
トンッ……。静かに襖が閉まる。
肩にかけていた羽織が
ひらりと床に落ち……
最初は驚いて身を固くしていたけれど、ぎゅっと抱き込むように家康の両腕が背中に回り、私は身を委ねるように体の力を抜く。湯上りの温かいぬくもりと酒気を帯びた体温がそこに足され、とても冬の夜とは思えないぐらい温かい。
(あったかいなぁ……)
心音が聴こえるぐらい顔を寄せる。
「早かったね。もっとゆっくりでも良かったんだよ?」
今度はしんみりとした声でさっきと同じ台詞で問えば、
「……変に長湯して……酒がまわると嫌だからね。それに……」
早くひまりとゆっくりしたかったし。ボソッとそう耳元で呟かれ、私はつい嬉しくて堪らず頬が緩む。ニヤつかない、って軽く注意されてクスリと笑った。
「ふふっ。そうだね」
「……誰かさんは、それを見越したみたいに先に湯浴みしてたみたいだけど」
ドキッ。
その言葉に反応して思わず顔を離す。すると翡翠色の瞳が真っ直ぐに捉えられ、その何かを探るような鋭い視線に、身体の芯が火照るのを感じ………
「今夜はお祝いだからって。先に信長さまから、少しは嗜むように先に言われてたの///……それより!!」
慌てて話題を逸らして、握りしめていた手を目の前に差し出すと、ゆっくり開く。
「誕生日おめでとうっ!」
「これ……」
「プレゼントだよ!」
「匂い袋……もしかしてひまりが作ったの?」
小さな手のひらに、
ちょこんと乗った袋。
改めてお祝いの言葉をかけ私はコクリと頷き、満面の笑顔を見せながら、それを渡す。翡翠色の生地に赤い紐。巾着型の匂い袋だった。家康が鼻を近づけると、ほのかに包む水仙の香り。
「…なんか落ち着く……優しい香りがする……」
「家康の贈り物を考えてる時にね。市場で、香料のお店を見つけて。そしたら匂い袋を思いついて……」
調合した香りがいくつかあり、色々悩んだことや、実はちゃっかりと自分も桃色の生地でお揃いで作ったことを私は話すと、ゆっくりと家康の腰元に腕を絡ませた。